プラン表の容量より先に見るべき項目
WordPressはリクエストのたびにPHPを実行し、MySQLに問い合わせて、その場でHTMLを組み立てる。静的なHTMLを置く場合と違い、表示速度はサーバー側の処理時間で決まる。そのためプラン表の先頭に並ぶディスク容量や転送量は、WordPress用途では優先度が低い。個人ブログや小規模サイトが数十GBのディスクを使い切ることはまずない。
実際に効いてくるのは、PHPの実行環境、キャッシュ機構、バックアップからの復元手段、そして契約を移すときの手間である。以下ではこの順に確認方法を示す。
表示速度に効く要素は機能名で確認できる
事業者は「高速」「国内最速」といった表現を使うが、比較の条件が明示されないことが多い。判断材料になるのは、実装されている機能の名前のほうだ。次の項目は仕様ページに書かれているか、サポートに問い合わせれば確認できる。
第一にストレージの種類。SATA接続のSSDよりNVMe接続のSSDが速く、データベースの読み書きが多いWordPressでは差が出る。第二にPHPの実行方式で、FastCGI形式で動作しOPcache(コンパイル結果を再利用する仕組み)が有効になっているかを見る。第三にサーバー側のキャッシュ機能である。生成済みのHTMLを保存して返すページキャッシュ、データベースの問い合わせ結果を保持するオブジェクトキャッシュ(Redisやmemcachedを使う)の有無は、体感速度に直結する。第四にHTTP/2やHTTP/3への対応、gzipやBrotliによる圧縮の有無。
共用サーバー特有の要素として、同じ物理サーバーに同居する他の利用者の影響がある。1台あたりの収容数を公表する事業者は少ないが、CPUやメモリの割り当てを数値で明示しているか、負荷が集中したときの制限方法(一時的な503応答か、処理の遅延か)を書いているかは判断材料になる。サーバーの設置場所も見ておく。国内の読者が対象なら国内データセンターのほうが往復時間が短い。
速度は契約前に完全には測れない。無料お試し期間があるなら、テーマとプラグインを入れた状態でPageSpeed InsightsやWebPageTestを使い、TTFB(サーバーが最初の1バイトを返すまでの時間)を測る。この値がサーバー側の処理時間をほぼ表す。
PHPとMySQLは「今の対応状況」と「切り替えの自由度」を見る
WordPress公式が示す動作要件は、WordPress.orgの要件ページで確認できる。推奨環境としてPHPは7.4以上、データベースはMySQL 8.0以上またはMariaDB 10.5以上が挙げられている。ただしこれは最低ラインであり、選ぶ基準にはならない。
基準になるのはPHP側のサポート期限である。PHP 8.1は2025年末でセキュリティ更新が終了しており、8.2も2026年末に終了予定だ。新規に契約するなら8.3以上を選べる事業者にする。古いバージョンしか用意されていないサーバーは、数年のうちに更新が止まった環境で運用することになる。
同じくらい重要なのが、バージョンを自分で切り替えられるかどうかだ。管理画面からPHPのバージョンを選べる事業者が多いが、選択肢に何が並ぶか、複数バージョンを並行して保持できるか、事業者が一斉に切り替える際の猶予期間はどれくらいかを確認する。プラグインやテーマが新しいPHPに対応していない場合、一時的に前のバージョンへ戻せることが復旧手段になる。
データベースはMySQLかMariaDBかを確認しておく。WordPress自体はどちらでも動くが、移行時にダンプの互換性で注意が必要な場面がある。作成できるデータベースの数も見ておく。1サイトなら1つで足りるが、検証用やサイトを増やす予定があるなら上限に当たる。
自動バックアップは復元まで含めて評価する
「自動バックアップ無料」と書かれていても、取得しているだけで復元が有料という構成は珍しくない。確認すべき点は取得側と復元側に分かれる。
| 確認項目 | 見るべき内容 |
|---|---|
| 取得頻度 | 1日1回か、それより短いか |
| 保持世代 | 直近何日ぶんを遡れるか(7日〜14日が多い) |
| 対象 | ファイルとデータベースの両方が含まれるか |
| 復元の実行者 | 管理画面から自分で戻せるか、依頼が必要か |
| 復元の費用 | 無料か、1回ごとに手数料がかかるか |
| 復元の粒度 | 全体のみか、特定のファイルやテーブルだけ戻せるか |
| 持ち出し | バックアップデータをダウンロードできるか |
復元の粒度は実務で差が出る。プラグインの更新で表示が壊れた場合に必要なのはファイルの巻き戻しだけで、その間に届いた問い合わせやコメントまで消えるのは避けたい。逆に投稿を誤って削除したならデータベースだけを戻したい。全体復元しかできないと、どちらの場合も余計なものまで巻き戻る。
事業者のバックアップは自分の契約と同じ場所にある点も意識する。契約の失効や支払いの停止でアカウントごと止まれば、バックアップにも到達できない。プラグインや手作業で外部ストレージへ二重化しておくと、この依存を切れる。そして復元は一度試しておく。手順を知らないまま本番障害に遭うと、復元機能があっても使えない。
独自ドメインとSSLは契約の切り離し方で考える
ドメインとサーバーは別々の事業者で契約できる。同じ事業者にまとめると管理画面が一つで済み、DNSの設定も自動で入る。分けておくと、サーバーを乗り換えるときにドメインの移管手続きが不要になり、切り替えはDNSのレコード変更だけで済む。乗り換える可能性を残したいなら分離を選ぶ。
SSL証明書は無料のもの(Let's Encryptなど)が標準で使えるサーバーが大半だ。確認するのは種類より運用面である。管理画面から数クリックで有効化できるか、期限が来たときに自動で更新されるか、サブドメインを含むワイルドカード証明書が使えるか、独自ドメインを追加したときに個別に設定が要るか。自動更新が止まっていることに気づかず期限切れを起こすと、ブラウザに警告が出てアクセスが止まる。
「ドメイン永久無料」といった特典は条件を読む。多くはサーバー契約の継続が条件で、解約するとドメインの扱いが変わる。特典の内容も更新頻度が高いため、公式サイトの規約で現在の条件を確認する。
移行のしやすさは入るときと出るときの両方で見る
WordPressサイトの引っ越しで動かすものは4つある。WordPress本体とテーマ・プラグイン・アップロード画像を含むファイル一式、記事や設定が入ったデータベース、ドメインのDNS設定、そしてそのドメインでメールを使っているならメールデータだ。このうち忘れられやすいのがメールで、DNSを切り替えた瞬間に受信先が変わるため、先に移行先でアカウントを作っておく必要がある。
移行の手段は三つに分かれる。移行先の事業者が用意する自動移行ツールに旧サーバーの接続情報を入力する方法、移行用プラグインでファイルとデータベースをまとめて書き出す方法、SSHで接続してファイルを転送しデータベースをダンプする手作業である。
初心者ほど自動移行ツールの有無が効くが、確認すべきは対応条件だ。旧サーバー側でFTPやSSHが使えることが前提になっており、データベースの容量に上限が設けられている場合もある。中級者以上ならSSH接続とWP-CLI(コマンドラインでWordPressを操作するツール)が使えるかを見る。この2つがあると、移行も定期メンテナンスも手数が減る。共用サーバーではSSHが使えないプランもあるため、プラン単位で確認する。
切り替え前の動作確認手段も重要になる。DNSを本番で切り替える前に、手元のhostsファイルを書き換えるか、事業者が用意する確認用URLで表示を検証できるかを調べておく。確認できないまま切り替えると、問題があったときに戻す作業が発生する。DNSのTTLを事前に短くしておくと、切り戻しが早く済む。
同じ観点を出口にも向ける。ファイル一式とデータベースのダンプを自分でダウンロードできれば、どこへでも移れる。逆に独自形式のバックアップしか取り出せず、SSHもデータベースの直接操作も許可されていない環境は、離れるときの費用が高くつく。
確認する順序と、最初にやること
比較の順序を決めておくと迷わない。第一にPHPのバージョンと切り替えの自由度。ここが古い事業者は他がよくても数年で行き詰まる。第二に復元手段で、自分で・無料で・部分的に戻せるかを見る。第三にSSHとWP-CLIの可否。第四にキャッシュ機能の有無。第五にSSLとドメインの運用。料金の比較はこの五つを満たす候補が残ってからでよい。プラン料金やキャンペーン条件は変動が速いため、必ず公式サイトの料金ページで最新の内容を確認する。
候補が2〜3社に絞れたら、無料お試し期間を使って実際にWordPressを入れる。使う予定のテーマとプラグインを入れた状態でTTFBを測り、管理画面からPHPのバージョンを切り替えてみて、バックアップから復元する手順を一度たどる。この3つを試した時点で、仕様ページからは読み取れない差がはっきりする。